仕事を探しにハローワークに行ったときや、インターネットを見ているとき、
職業訓練
という言葉を見かけたことはありませんか?
今回は、
- 職業訓練ってどんなとこ?
- どうやったら受けられる?
- 何を勉強できる?
- 学校の雰囲気は?
- 就職・転職に役立つ?
といった疑問のある方に向けて、職業訓練を受講したこともあり、また講師として教えたこともあるわたし個人の経験に基づくお話をしてみたいと思います。
あくまで個人の経験に基づいているので、すべての訓練校に当てはまるとは限りません。また公的な職業訓練校(ポリテクなど)の経験は一切ありませんので、体験談や感想はすべて、民間委託の職業訓練校でのお話であることをご了承ください。
公的職業訓練制度について確認しよう
まず最初に、職業訓練という制度について確認しておきましょう。
- 就職・転職のためにスキルを身に付けたい
そういった方々のためにあるのが「公的職業訓練制度」です。
目標はあくまでも「スキルを身に付けて就職・転職する」ことです。カルチャースクールではないので、資格取得目的での受講は認められません。
公共職業訓練と求職者支援訓練の2種類がある
公的職業訓練制度には
の2種類があり、それぞれ受講できる条件が違います。まずは、どちらの訓練にも当てはまる共通の受講条件について確認しましょう。
公的職業訓練を受講できるのは「働いていない人」
公共職業訓練・求職者支援訓練の2つに共通する条件として「働いていない人」というものがあります。
現在働いていない人が、次の仕事に役立つ資格やスキルを身に付けるための場所が職業訓練校だからです。
アルバイトが認められる場合もある
ただし、状況によってはアルバイトが認められる場合もあります。
失業手当の額が少ない、子どもがたくさんいる、病院に通っているなど、金銭的な事情でアルバイトしたい場合は、事前に必ずハローワークに相談するようにしましょう。
アルバイトをする場合、ハローワークへの相談は必須です。隠れてアルバイトをして見つかると、厳しい罰則があります。
職業訓練を受講するための条件とは
では、公共職業訓練・求職者支援訓練それぞれについて、詳しくご紹介していきます。まず公共職業訓練から見ていきましょう。
公共職業訓練を受講できるのはどんな人?
公共職業訓練を受講できるのは、
という条件すべてに当てはまるとハローワークで認定された人です。
いくら自分では当てはまると思っても、ハローワークに認定されなければ受講できません。
条件に当てはまっているということをハローワーク職員に認定してもらうため、様々な書類を提出したり、複数回の面談で将来について、仕事についての質問に答えたりします。
特に「この訓練を受講したあと、訓練で学んだことをどのように仕事で活かしていくのか」という点について、しつこいくらい確認されます。
- スキルアップしたい
- 資格を取りたい
という答えでは、ハローワーク職員は納得してくれません。訓練で学ぶことをどう活かしていくつもりなのか、しっかりと考えてから面談を受けるようにしましょう。
求職者支援訓練を受講出来るのはどんな人?
公共職業訓練は、失業手当を受給している方向けの訓練ですが、失業手当を受給出来ない方のための訓練が求職者支援訓練です。
こちらの受講資格は、
となっています。
基本的には失業手当を受給できない人の為の訓練ですが、失業手当を受給している人でも、どうしても受講したい訓練コースが求職者支援の方にある場合、受講できることもあります。
- 受講したい内容が公共職業訓練では見つからない
- どうしても学びたい内容が求職者支援訓練にある
という場合には、ハローワークで相談してみることをお勧めします。
- 失業手当を貰える人は公共職業訓練・求職者支援訓練どちらも受講可能
- 失業手当を貰えない人は求職者支援訓練のみ受講可能
失業手当を貰っていて、公共職業訓練に行く資格のある人が敢えて求職者支援訓練に行った場合、公共職業訓練に行った時より少し損をします。
このあと「デメリット」のところで詳しく解説しますので、失業手当を貰いながら求職者支援訓練を受けたいと思っている方はぜひ確認してください。
訓練を受講するメリット・デメリットとは?
わたしはかつて、
- 公共職業訓練を1回
- 求職者支援訓練を1回
の計2回、職業訓練を受講しました。さらに、公共職業訓練・求職者支援訓練(その前の基金訓練)で複数回、講師として教えた経験があります。
そんなわたしの経験を踏まえ、訓練を受講する上でのメリットとデメリットについてご紹介したいと思います。あくまでも、わたし個人の経験に基づいた「個人的な意見」です。その点、ご了承ください。
訓練受講のメリット
基本的に、職業訓練を受けられるというだけで大きなメリットです。
わたしが実際そうでしたが、
- パソコンを持っていない
- パソコンスクールにいく金銭的余裕がない
という人間がパソコンスキルを身に付けたいと思ったとき、職業訓練は
- パソコンをタダで使わせてくれる
- 使い方を教えてくれる
- 教材費が安い
と三拍子揃った最高の環境です。
通常パソコンを勉強しようと思ったら、数万円かかるのが当たり前です。でも、職業訓練を受講できれば、数千円(講座による)のテキスト代と資格試験の受験料しかかかりません。
公共職業訓練を受講すると失業手当の支給額が増える?
公共職業訓練を受講した場合の金銭的なメリットとして、
- 失業手当の支給額が増える
- 失業手当の支給期間が延びる
という点があげられます。
失業手当を貰いながら公共職業訓練を受講すると、失業手当に訓練手当と交通費(距離による)がプラスされます。
また失業手当の支給日数も、訓練期間がまだ残っている場合に限り、訓練の最終日まで延長されます。実質的に支給日数が増える、ということになります。
わたしは失業手当の受給開始後、すぐに公共職業訓練に通い始めました。訓練修了の数週間前に支給日数の残りが0になりましたが、所定の手続きをおこない、訓練最終日までの失業手当が支給されました。
なるべく長く失業手当を貰うため、失業手当が切れる寸前に訓練の受講を申し込む人がたまにいます。が、入校試験に落ちる可能性も0ではありません。
訓練の内容や訓練場所によっては、倍率が非常に高くなるケースがあります。
無職のまま失業手当の支給が終わってしまうのは避けたいところなので、受けたい訓練が見つかったら、早めに申し込むようにしましょう。
求職者支援訓練は短期間で退職した人の強い味方
勤続1年未満で自己都合退職した場合、雇用保険に加入していても失業手当は支給されません。
会社都合退職であれば当然支給されますが、なかなか会社都合を認めてくれる企業は少ないのが実情です。
また、わたしのような自営業者が廃業した場合も、何の保障もありません。
当然、金銭的にかなり厳しい状況になります。そんな時、職業訓練受講給付金を貰いながら勉強できるのが、求職者支援訓練の最大のメリットです。
職業訓練受講給付金の支給要件を満たせば、月額10万円が支給されます。もちろん返還の必要もありません。
また、求職者支援資金融資という貸付制度もあります。条件は厳しいですが、月額5~10万円の融資を受けることができます。
こちらは融資なので、利息を含めて返済が必要です。本当に必要な場合のみ、利用されることをお勧めします。
訓練受講のデメリット
このように様々なメリットのある職業訓練ですが、もちろんデメリットに感じることもあります。わたしが個人的にイヤだなと感じたことは、
- やりたくないカリキュラムを受けなければいけない
- 就職活動頑張ってるアピールをしなければいけない
- 訓練修了後も報告書を提出しなければいけない
- 欠席・遅刻にとても厳しい
といった点でした。
やりたくないカリキュラムを受けなければいけない
わたしが受講した時は、面接の練習(ロープレ)が一番イヤなカリキュラムでした。面接という体で、わざわざドアをノックするところからやらされるのが、本当に本気でイヤで、多分かなり顔に出ていたと思います。
残念ながらこの面接の練習(ロープレ)は、どこの訓練校を選んでも確実にあります。しかも1回だけとは限りません。訓練に行かれる方は覚悟を決めておいたほうがいいです。
就職活動頑張ってるアピールをしなければいけない
就職活動については、活動報告書のようなものを提出してた記憶があります。
○月×日に~~で面接、○月△日★★へネットエントリー、とか、そんな感じだったと思います。
自分の仕事に関することなので、当然求人検索や書類作成、応募といった就職活動をおこなうと思います。それをそのまま素直に書けば問題ありません。
ただし、応募数が少ないと呼び出されたりするので要注意です。
訓練修了後も報告書を提出しなければいけない
また、訓練が修了してもすぐに訓練校と縁が切れるわけではなく、メールや電話で活動状況を聞かれたり、活動報告書を送ったりしなければいけません。
あまりにも仕事が決まらずにいると、電話が掛かって来て色々言われたりすることもあります。
はじめて公共職業訓練を受講したとき、仕事が決まらないまま訓練が修了してしまいました。すると、時々電話が掛かってきて「そこで働いても生活費がマイナスになるんだけどな…」という求人をゴリ押しされたりしました。
欠席・遅刻にとても厳しい
これはデメリットというかは微妙なところです。ただ、人によっては面倒だなと感じるかも知れません。
欠席の理由と回数はとても厳しくチェックされて、既定の割合を超えてしまったら容赦なく退校(訓練校を辞めさせられること)になってしまいます。どんなにクレームを入れても翻ることはありません。
いくら授業の内容が自分に不要だと思っても、面接の練習はやりたくないと思っても、気軽に欠席すると自分が痛い目にあいます。
最初に必ず説明がありますので、しっかり説明を聞いて正しく欠席・遅刻をするように気を付けてください。
失業手当受給者が求職者支援訓練を受講するデメリット
最後に特殊な例ですが、失業手当を受給している人が公共職業訓練ではなく求職者支援訓練を選んだ場合のデメリットをお話しておきたいと思います。
公共職業訓練を受講すると失業手当の支給額が増える?の項目で紹介したように、
- 訓練手当、交通費がプラスされる
- 訓練最終日まで失業手当が延長される
というメリットがありました。
しかし求職者支援訓練を選ぶと、失業手当の延長がなくなります。また、交通費は出ますが、訓練手当はプラスされません。
公共職業訓練を受講する場合と比較すると、支給される金額が少なくなりますので、どうしても受講したい訓練があるとき以外は、求職者支援訓練を選択することをお勧めしません。
効率良く職業訓練の受講を申し込むには?
公共職業訓練と求職者支援訓練についてわかったところで、効率良く職業訓練に申し込む方法をまとめました。
実際に申し込む際の参考になればと思います。
失業手当の受給日数を考えて早めに申し込もう
訓練の申し込みには、失業手当の受給日数が何日以上残っていないと申し込めない、という決まりがあります。
出来るだけ失業手当を引き延ばそうと、ギリギリに申し込みに行くと、残りの日数が足りず申し込めない、という事態が起こり得ます。
また、人気のある訓練内容・場所だと、定員の倍以上の申し込みがあり、入校試験で半数以上の人が不合格になることもあります。
惜しくも不合格になった場合、別の訓練に申し込むことは出来ます。
残念ながら不合格になる事も想定し、失業手当の日数に余裕がある内に申し込むことを強くお勧めします。
訓練期間中の生活費を確保しておこう
求職者支援訓練の場合、支援金の対象にならなければ金銭的な補助は一切ありません。
- 貯金をしておく
- 失業手当が受給できるまで退職を待つ
- 期間の決まった仕事(短期派遣やアルバイト等)でタイミングを合わせる
など、戦略的に動く必要があります。
【リクナビ派遣】時給1800円以上、未経験OK・・・お仕事情報毎日更新!退職前から情報収集をしておこう
自分に合ったコースをタイミング良く受講するには、早めの情報収集が大切です。
仕事を辞める予定がまだなくても、暇を見つけてハローワークに行ったり、インターネットで訓練のコースを調べたりしておくといいかも知れません。
全国で実施されている公的職業訓練のコース情報はコチラから検索できます。
職業訓練受講のすゝめ
というわけで今回は、公的職業訓練についてと、効率的な訓練の受講についてご紹介しました。
最初に申し上げたように、わたしは職業訓練の受講経験がある現役職業訓練講師、というとても珍しい存在です。
これまで何十人と講師の方にお会いしましたが、訓練の受講経験がある方に会ったことがありません。もしかしたら、わたしが知らないところにいらっしゃるのかも知れませんが。
そして、職業訓練を受講してパソコンを身に付けたことで、本当に人生が変わりました。今はすごく楽しく自由に仕事をさせて貰っています。
働きながら資格の勉強をしたり、独学で勉強するのはすごく大変です。本や動画を見てもわからなかったところが、人に習うと案外簡単だったりします。
パソコンに限らず
- スキルアップをしてより高いお給料の仕事に転職したい方
- 資格を取得し、自信を持って転職活動をしたい方
- お子さんとの時間を作るために転職を考えている方
など、今の生活を変えたいと思っている方、一度どんな訓練があるか検索してみませんか?そして興味が沸いたらハローワークに話を聞きに行ってみましょう。
それでは。